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10月15日

 子実体を培養する。
 ■ 子実体(きのこ)の菌糸を伸ばす。

 まずはこの写真を見て頂きたい。  
 これは何だかお分かりでしょうか? 一般の方には、サッパリ解らないと思います。 
 樹木医でもほとんどの人が解らないでしょう。 しかし、ヒントを貰えば・・・樹木医ならかなりの人が解ります。

 
『根っこに見えるでしょ。 根っこのような状態でしょう。』

 解る人はこのヒントで解ります。 培地上にあるので、これは菌糸です。 その菌糸が根っこの状態に見えるのは・・・・
 そうです。 これが
 『根状菌糸束』 と呼ばれるものです。

 これは、ナラタケモドキの根状菌糸束です。  ・・・・と、ここで知識のある方は疑問に思うでしょう。 

 
『根状菌糸束が出来るのは、ナラタケでナラタケモドキは作らないのでは?』 と。
 
 当然、そう考えるはずです。 そのように
教科書に書いてあるからです。 (※緑化樹木腐朽病害ハンドブックP18参照。) 
 しかし、それは自然界での話で、このような人工的な培地上では、
ナラタケモドキも根状菌糸束を作るのです。


 ■ この技術を取得したい!
 初めてこれを見た時に考えた。 

 『この技術を得れば、実際の現場で確実な診断が出来るんじゃないの?  枯れた樹木の木部などを持ち帰り、それを培養してこの状態になれば、それってならたけ病(ならたけもどき病)を、
断定診断できるんじゃないの?』

 そう考えて、これを持って来た人に質問してみた。 やはりか。 簡単では無いけど、可能だという。
 ふむふむ。そういう事なら、この技術を取得するのも良いだろう。 

 ■ 見よう見真似でやってみる!

 とにかくやってみよう! 見よう見真似で実際にやてみた! 

ナラタケモドキの子実体(きのこ)を用意します。 なんだかよく解らないけど、とにかく培地上においてみた。

 
※樹木医同期へ:この子実体は、あの研修のとき、木○根橋で採取したものです。 (^_^;)


 さて、どうなったでしょう・・・・。 って、こんなに簡単な方法で上手く行くわけありません・・・・。

  バクテリアが繁殖しまくり、コンタミしまくり!です。
  
  ぐちゃぐちゃ! (^_^;)

  

 う〜ん。 これはイカン。 さてさて、どうしたものか。  ここはひとつ専門家に素直に聞いてみよう!
 
 『ふんふん、なるほど、その方法ではコンタミしてぐちゃぐちゃでしょうね。想像が付きますよ。 まずは新鮮な子実体を手に入れなさい。』
 
 そこである人に、『新鮮なモドキを送れ〜!』 と連絡してみた。 ところ・・・ かなりの苦労があったようだが、H氏はちゃんと送ってくれた。
 感謝! (^^♪
 (※H氏とはFB上での交流のみで、実はまだ逢った事がない。 ただ、絶対にお会いしたい一人である。)
 
 ■ 基本を教わる。

こちらがH氏がおくってくれたナラタケモドキ。

こちらは練習用に用意したコツブタケ。

 培地作成の基本、培地の種類、バクテリアの抑え方などを教わる。 ・・・う〜ん、全く知らない事ばかりだ・・・ものすごく特した気分です。 (^^♪
まずはコツブタケで練習をします。

コツブタケは大きいので、扱いが良く、雑菌が入りにくいそうです。



これが上手くいくと、次の2枚の写真のようになるそうです。

 これがコツブタケの’培養菌そう’です。 見る人がみたら、コツブタケにしか見えないそうなのですが、・・・私にはまだよく解りません。 (汗)

 ■ そして自分でやる!
 
 『なんだか簡単そうに書いてるけど、実際は器材も必要だし、シロートには無理なんじゃないの?』

 という声が聞こえてきそうです。 確かにある程度の器材は必要です。 しかし、高価な器材はなくても何とかなります。

 オートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)は、圧力鍋で代用します。 クリーンベンチは、キャンプ用のガスバーナーで代用します。
 お金なんてかけなくても何とかなります。 ただやり難いだけです。

 で、自分でやってみた!

 
でっ、出来たー!\(^o^)/

 ふぅ、なんとかできました。 今回は、子実体からの培養でしたが、次回は被害木からチャレンジしてみたいと思います。

 ■ エピローグ。 しかし、偶然に・・・。
 
 なんとまぁ。 5枚目のこの写真をもう一度見て欲しい。
だれがどうみても失敗作・・・のはずだった。 →  
 
しかし、裏面をみると・・・・
 ← 中央の菌糸束がお分かりだろうか・・・?
拡大して切り抜きました。

中央にヒトデ状に拡がる菌糸がお解かりでしょうか? →
なんと最初に自前で作成した、4つの培地のうちの一つが、成功していたのですね。 (^^♪


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